携帯電話やスマートフォンの普及と共にどこに居てもインターネットに接続できる通信環境が整備されました。現代の生活における「通信」はもはや必要不可欠な存在となっています。
通信は日々の暮らしの中で家族や友人との連絡手段をはじめ、ニュースの閲覧や情報収集・発信など、あらゆる分野で当たり前に利用されています。同様に、災害時においても非常に重要な役割を持っています。
このページでは、情報伝達を実現する通信の種類とその特徴についてご紹介しています。
J-ALERT
総務省が整備を行っており、2007年から運用されています。Jアラートが整備された目的は、地震や津波、弾道ミサイルの発射など、国民が「緊急で対処行動をとらなければならない事象」が発生した場合に、必要となる情報を政府から国民へ直接発信するためとされています。
Jアラートで伝えられる情報
伝えられる情報は大きく2つに分けられます。
ひとつは「地震や津波などの気象関連情報」です。他方が「弾道ミサイルや大規模テロなどの有事関連情報」です。これらの緊急事態が発生すると消防庁から人工衛星を介して受信機へ信号が送られます。自動で防災行政無線が起動して予め決められた音声を放送する仕組みです。
Jアラートの受信
Jアラートはお持ちのスマートフォンでも受信できます。
iPhoneであれば設定から緊急地震速報をONにすれば完了です。アンドロイドのスマートフォンであればキャリア毎の災害対策アプリをダウンロードする必要があります。
また、旧式の携帯電話をお持ちでJアラートの受信設定ができない方もいらっしゃると思います。一部の都道府県や市町村では事前に登録した携帯電話のメールアドレス宛に情報を配信するサービスを展開しています。お住まいの地域が該当するか確認してみてください。
緊急地震速報
システムの仕組み
地震には「初期微動」と言われるP波と「主要動」と言われるS波があります。
2つを比較すると、P波は小さく伝わる速度が速くなっています。S波が到達するまでの「時間差」を利用して緊急地震速報を発信する仕組みです。
ただし、時間差があると言っても数秒から数十秒しかありません。日ごろから緊急地震速報を受け取った時に取るべき行動について整理しておく必要があります。
緊急地震速報を受け取った時に取るべき行動
大勢の人がいる商業施設では、係員の指示に従い冷静に行動することが大切です。
自動車運転中の場合には急ブレーキを踏まず、ハザードランプを点灯させて徐々に減速してください。急ブレーキは追突事故の原因となり大変危険です。
電車の中であれば吊皮や手すりにしっかりとつかまり、転倒しないように注意します。エレベーターで乗降している場合には閉じ込められる危険があるため、最寄りの階で停止してすぐに降りることを心掛けます。また、避難する際にエレベーターは使用しないでください。
屋外では周囲の建造物が倒壊する恐れがありますので、建物のそばから離れてください。
これらの行動はあくまで原則です。緊急地震速報を聞いてもパニックにならず、その時の状況を判断して対応することが大切です。
V-Lowマルチメディア放送
マルチメディア放送の一部がV-Lowマルチメディア放送にあたります。放送サービスの一環として「Vアラート」と呼ばれる防災情報配信システムの整備が進められています。
Vアラート
自治体が保有する入力端末から放送局に放送データを送信すると、対応するラジオやデジタルサイネージなどに情報が伝えられます。
これまでのテレビやラジオの緊急速報となにが違うのか、とお考えになる人もいるかと思います。違いは「必要な人だけ」に狙いを定めて緊急情報を伝達できる点です。
従来のアナログ放送との違い
従来のアナログ放送では1波で1内容しか流せませんでした。A地区の避難情報を放送するとB地区やC地区にいる人にもA地区の避難情報が提供されてしまいます。
一方、Vアラートはデジタル放送なのでデータを送信地区別に分けて提供できます。つまり、A地区の人にはA地区に限定した避難情報を、B地区の人にはB地区に限定した避難情報を提供できます。
呼び名がよく似ているJアラートとの違いは「送信・受信できる情報のリッチさ」にあります。Vアラートはマルチメディア放送です。テキストデータや音声だけでなく静止画なども同時に配信できます。
VSAT
VSATとは
「VSAT」を簡単にいうと小型地球局です。小型地球局とは、通信衛星で用いられる電波を地上で受ける基地局の内、口径が小さなパラボナアンテナを使用する地球局の総称です。
災害時における衛星通信の利便性を向上する役割を担います。通常の衛星通信で用いられるアンテナが数十メートルあるのに対し、VSATは1.2mほどと小さくなっています。
特徴とメリット
小型という特徴を生かし、被災地にVSATを持ちこむことで通信インフラを確保できます。
その結果、被災地から災害対策機関への映像転送、臨時公衆電話や携帯電話仮設基地局へのエントランス回線、市役所や避難所におけるインターネットアクセスなど多方面での活用が期待されます。
VSATは熟練した技術者でないと操作できないという課題がありました。VSATの設置に際してはアンテナの方向調整や送信レベル、周波数の調整が必要となるためです。最近ではこれらの動作を自動的に実施してくれる製品も登場しています。
IoT
どのような事例があるのか
例えば、圧力計や水位計を用いて「水位自動監視システム」を構築する取り組みが各地で進められています。増水や豪雨による河川氾濫の危険を予測できるようになります。
また、岩盤や高層ビル、橋梁などの建築物に「振動計測装置」を取り付けることで地震による歪みや揺れの大きさを記録できます。設定した警戒値を超えるとアラートしてくれるシステムを導入していれば、建物の倒壊リスクを事前に知ることができます。これにより、速やかな避難活動につながります。
センサーの多様化
土中水分量の変化を調べるセンサーで土砂崩れの前兆を掴むサービスも登場しています。土中水分量が多くなると地盤が緩み土砂崩れの原因となります。
従来の土砂崩れ探知には、斜面の滑り始めを観測する予知計測が実施されてきました。一方、水分量を調べるセンサーを活用することで滑り始める前の危険度を調査できます。その結果、より早い段階で避難勧告を実施できるようになっています。
防災情報ステーション
センサー以外にもIoTを活用した製品があります。例としては「防災情報ステーション」が挙げられます。この製品は太陽電池、蓄電池、デジタルサイネージ、Wi-Fiアクセスポイントを組み合わせて構成した多機能案内板です。
デジタルサイネージにより避難誘導や安否情報の発信・通知、救助活動の状況、必要物資の依頼などの情報通信を実現します。平時には広告宣伝や各種案内、観光情報の提供などを行うことができます。
また、スマートフォンのWi-Fiアクセスポイントとして最低限のパケット通信を実現することもできます。太陽光発電を電力源として使用する「自律稼働タイプ」です。災害による停電時にも問題なく稼働します。いまや重要なインフラとなったスマートフォンの充電器としても使用可能です。