操縦者の育成や撮影した情報の管理といった施策は必要となりますが、ドローン活用の幅は大きく広がっています。「ラジコンとはどう違うの?」と思われる方も多いと思います。最大の違いは自動飛行をする点です。ドローンはGPSなどを利用して自動飛行を行います。ラジコンヘリは人間がコントローラーを用いて手動で制御します。
現在の日本では「ドローンは人が目の届く範囲で操作されること」というルールが存在しています。そのため、TVなどでよく見かけるドローンはラジコンヘリに近いといえます。但し、今後はAI技術の発展と共に自動制御のドローンも登場してくると予想されています。2つの定義は区別しておいた方が理解に役立ちます。
ドローン活用のメリット
小さな機体で飛行可能
第一に、小さな機体で飛行できる点です。
ドローンにもさまざまな種類があるため一概には言えませんが、200gから1kgの間に収まるものが多く非常にコンパクトです。ビルや樹木などの障害物が存在していても容易に回避しながら飛行できます。また、空を飛んで移動するため地表面の状況にかかわりなく目的地に到達できます。
土砂災害などで孤立してしまった集落でも活用できます。トラックやヘリコプターの侵入を阻む障害物をかわしながら必要な物資を配送できます。プロペラから生じる騒音も比較的小さく、ドローンが飛行する周辺の音声を拾うことができます。
被災地域に取り残されている人の発見にも貢献できます。
無人飛行
第二に、無人である点です。
ドローンは自動飛行したり遠隔地から制御されて飛行します。つまり、人では立ち入ることができない場所に侵入したり危険を伴う作業を遂行できます。
例えば、東日本大震災で発生した放射能で汚染されている福島第一原発周辺の状況調査などが挙げられます。
上空からの映像を撮影
第三に、状況確認に適している点です。
上空からの映像を撮影できるため、災害状況を俯瞰できます。必要に応じて災害現場に近づき、より詳細な映像を収集することも可能です。
2016年に起きた熊本地震ではドローンを用いて阿蘇大橋周辺の土砂崩れ箇所の状況を確認した実績があります。
ドローン活用のデメリット
飛行時間が短い
第一に、飛行時間が短い点です。
現在使用されているドローンの多くは20~30分ほどしか飛行できません。距離に換算すると数kmが限度です。もし飛行時間を1~2時間に延ばせれば、ドローンを数百km先まで派遣することも可能になります。
小型・大容量のバッテリーがあれば問題は解決できます。しかし、現状(2018年時点)は要求を満たすほどの製品は開発されていません。現実的な運用方法としては、飛行しながらバッテリーを交換できるシステムを構築することで飛行時間を延長することが挙げられます。
自律制御機能の進化
第二に、自律制御機能の進化です。
都市部を飛行する可能性を考慮すれば、鳥や電線などを回避する制御機能が必要です。静止物はもちろん、動いている物も正確に把握して衝突を避けるシステムが完成しない限り人の手を離れたドローンの運用は困難です。
法整備
第三に、法整備です。
ドローンは近年注目を集め始めた技術です。法令が十分に整備できているとは言い難い状況です。基本的なルールとしては、空港の周辺や人口集中地区、150m以上の高さで飛行する場合には事前許可が必要です。
また、飛行時間は日中であること、目視できる範囲で飛行すること、人やモノと30m以上の間隔をあけて飛行すること、多数の人が集まる催しで飛行しないこと、危険物を輸送しないこと、モノを投下しないこと、といった禁止事項が定められています。
今後はドローンの安全運用のためにルールが制定されていくものと思われます。そのなかでドローンの性能や使用方法に制限が加えられる可能性もあります。今後の法整備の動向には十分に注意する必要があります。
ドローンによる防災活動の例
ドローンを使用することで以下のような防災活動が実現可能だとされています。
用途 | 目的 | 機能 | 使用例 |
調査 | 災害状況の確認 | カメラ、マイク | 熊本地震など |
調査 | 不明者の捜索 | カメラ、ビーコン | 熊本地震など |
調査 | 災害状況の確認 | カメラ、測定器 | 福島第一原発など |
調査 | 噴火状況の確認 | カメラ、測定器 | 御岳山など |
巡視 | サメの確認 | カメラ | 茨城県 |
巡視 | 不法投棄 | カメラ | 青森県 |
救助 | 救命胴衣の輸送 | 救命胴衣 | アメリカ |
点検 | ダムのひび割れ | カメラ | 神奈川県 |
点検 | 橋梁の劣化 | カメラ | 実験中 |
その他 | 山火事の消火 | 消火剤投下 | アメリカ |
その他 | 再燃火災の防止 | 赤外線カメラ | アメリカ |
今後のドローン運用
人材育成
第一に、取り扱う人の教育です。
今後増えるであろう法令、ドローンの操作方法、その他リスクアセスメントなどへの理解を持つ担当者が適切に取り扱わなければなりません。その点で、ドローンに関する教育機関の充実が求められます。
保守点検
第二に、保守点検です。
ドローンは機械ですので、常時使用していなければいざという時に正常に稼働しません。加えて、長い間使用しない期間があれば操作する人員のスキルも低下します。ドローンを有事の際に活用するためには平時からインフラ点検など他の用途でも活用し続ける必要があります。