ソーラーパネルと景観問題

この記事は約8分で読めます。
ソーラーパネルの普及経緯

ソーラーパネルの普及は2010年代から急速に進みました。日本においては2011年に起きた東日本大震災がきっかけとなっています。原子力発電が停止し、電力供給手段のひとつである再生可能エネルギー(太陽光発電)に注目が集まりました。

太陽電池の景観

太陽光発電の発電量は、FIT制度(太陽光発電の余剰電力買取)の開始と共に、2010年度に350万kWであったものが2019年度には6300万kWと約20倍に増大しています。脱炭素化の取り組みに向けて太陽光発電の普及は更に加速すると予想されています。

そうした中、ソーラーパネルの普及における懸念材料のひとつとして「景観への影響」が指摘されています。

このページでは、ソーラーパネルと景観における関係について詳しくご紹介しています。

ソーラーパネルとは

太陽電池の景観2

ソーラーパネルとは、「日光を浴びることでエネルギーを創り出す発電機器のこと」をいいます。自然に存在する太陽光を活用して電力を生成します。

再生可能エネルギーの代表格として広く普及しています。実際に、自然エネルギーのシェアの大半を占める発電方法となっています。従来型の電力供給から大きな変革をもたらしました。

太陽光発電の仕組み

ソーラーパネルには様々な素材があります。その中で、代表的な素材には「シリコン」が用いられています。まず、シリコンを形成することで[n型半導体]と[p型半導体]と呼ばれる層が生成されます。次に、それらを貼り合わせて半導体の接合面を作ります。

ここに太陽光を当てることで、エネルギーを得た接合面の電子が移動して電流が発生する仕組みです。

ソーラーパネルの設置場所

通常、ソーラーパネルは家屋やビルの屋根に取り付けられます。

屋根は直射日光を受けやすく、発電の効率が良い場所だからです。日光を遮るものが少ないという利点があり、発電時間も長くなります。また、近年では建材と組み合わせたBIPVとして使用されることも増えています。

屋根だけでなく建物の壁面などにも設置されるようになりました。

ソーラーパネルの主なメリット

省エネのイメージ

地球にやさしい

太陽光発電の特徴として、クリーンエネルギーである点が挙げられます。

化石燃料を使用した発電は大量のCO2を排出し、地球温暖化の主要な要因となっています。一方、ソーラーパネルは、発電時に温室効果ガス(特に二酸化炭素)や大気汚染物質を排出しません。クリーンな電力を提供し、環境への負荷を軽減します。

また、発電時に水も必要ないため、他のエネルギー源と比べて水資源への負荷も少くなっています。

安価な維持費

太陽光発電は、設置後の維持費用が非常に安価です。

太陽光そのものが無料で供給されるため、運転コストがほとんどかかりません。また、ソーラーパネル自体は耐久性が高く、故障も少ない製品です。定期的なクリーニングやチェックだけで長期間にわたり使用できます。

初期投資が大きくなりがちであるため、これを回収するまでには数年程かかることがあります。しかし、その後はほぼ無料の電力を得ることができます。

エネルギーの独立性

ソーラーパネルを設置することで、電力会社からの電力供給に依存する必要がなくなります。これをエネルギーの独立性と呼びます。

太陽光発電とバッテリーシステムと組み合わせることで、夜間や曇りの日においても、蓄電された電力を使用することが可能です。これにより、停電やエネルギー価格の変動に対するリスクを軽減できます。より安定したエネルギー供給を確保できます。

応用範囲の広さ

ソーラーパネルは、住宅の屋根や建物の壁、さらには遊休地にも自由に設置できます。太陽光発電を利用したポータブルタイプの製品もあり、キャンプや災害時の非常用電源として利用されることも増えています。

また、技術の進歩により、ソーラーパネルは小型の電子機器、電気自動車、ドローンなどにも応用されるようになりました。このように、エネルギーの使用範囲が拡大しています。

ソーラーパネルの技術は急速に進歩しており、発電効率が向上しています。これに伴い、パネルのコストも下がっており、以前よりも手頃な価格で導入できるようになっています。

また、新しい材料や製造技術が開発され、ソーラーパネルの設置がより簡単で効率的になっています。

ソーラーパネルの主なデメリット

発電量の変動

ソーラーパネルのデメリットとして、よく挙げられるものに「発電量の変動」があります。

発電には日光が必要となるため、悪天候の場合は発電量が大きく落ち込みます。天候は過去のデータからある程度の予測ができるとはいえ、人為的な制御はできません。

外観性の悪化

加えて指摘される問題点が、見た目のデザインである「外観性」です。

ソーラーパネルは黒色(濃紺)で機械的な受光面をもちます。いかにも人工的な外観となっており、設置場所によっては景観を乱す要因となります。特に、住宅街や観光地では顕著な問題であると指摘されています。

この問題に対しては、色素増感型など外観面の配色やデザイン性に注力したソーラーパネルの研究が進められています。しかし、発電効率の低さから普及に向けて課題が残っています。

Q
ソーラーパネルはなぜ黒色(濃紺)なのか
A

ソーラーパネルの表面は何層もの酸化膜や窒化膜、反射防止膜などに覆われています。こうした層が重なり合うことで濃紺~黒色の色味となります。また、変換効率の面においても光の吸収率が高い黒系の色味が適しているといえます。

ソーラーパネルが景観に与える影響

公園

景観面でのトラブルは、メガソーラー発電施設が最も多いとされています。

メガソーラーは数百~数千枚のパネルを敷き詰めるため、広大な土地面積が必要です。

こうした土地は郊外・山間部などが中心となっており、田園風景の中に巨大な人工物が現れるような歪な景色が生じてしまいます。

乱立の原因

メガソーラー発電施設の多くは、2011年のFIT制度以降に建造されました。

FIT制度(固定価格買取制度)とは

再生可能エネルギーの普及を促進するための政策の一つです。政府が再生可能エネルギーで発電された電力を一定期間、固定された価格で電力会社に買い取らせる仕組みです。主に太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー源を対象としています。この制度の目的は、再生可能エネルギーの導入を支援し、エネルギーの多様化と持続可能な発電を推進することです。

FIT制度により、電力の買い取り価格が高騰したことから急速にソーラー施設の導入が進められました。

建造の規制や地域の合意形成が未発達の状態であったことから、開発が頓挫していた遊休地や未使用の農地などにも投資目的でソーラー発電所が乱立してしまう結果となりました。

周囲への影響

ソーラーパネルの外観はどうしても自然や歴史的な建造物と相容れない部分があります。住宅街や観光地にはそぐわず、美しい景観を棄損してしまうリスクとなりがちです。

ソーラーパネルと景観の改善点

上昇

法律での規制

景観に関する改善点にはいくつかの項目が提示されています。

例えば、日本でも有数の観光資源が多い京都市。同市では、ソーラーパネルの設置に関する法規制が敷かれています。その内容として、ソーラーパネル設置の規制エリアを設けることや色彩基準、景観手続きの実施などがあります。ソーラーパネルの導入場所や配色を限定し、景観を守る取り組みです。

クリーンエネルギーを取り入れていくことは大変重要なことです。しかし、その土地に合った導入方法を模索するといった観点も欠かしてはなりません。

新しい技術開発

上述したような「外観性を高めたソーラーパネル」の技術開発も進められています。

外観の問題が許容されれば、観光地や住宅街をはじめとして、様々な場所への導入が広がると予測されています。但し、新しい技術はコストが高くなりがちであること、現状よりも発電効率が低下してしまあうことなどを勘案する必要があります。

新たな発電方法や機会を創造していくには、企業や行政をはじめステークホルダーの協力が不可欠となります。

当社の取り組み【ソーラーパネル内蔵型コードレスLED表示板】

ソーラーパネル内蔵型コードレスLED表示板

当社では、太陽電池による「クリーンな発電」と「外観面の意匠性」を両立できないかと研究開発に取り組んできました。

当製品は、その中で誕生した【ソーラーパネル内蔵型コードレスLED表示板】です。

独立した発電機能

ソーラー内蔵構造

独自の発電機能をもつ表示板であり、以下のような特徴をもちます。

  • ソーラーパネルの表示面に特殊な高透過フィルムを重ねています
  • 受光面の無機質な外観を隠しつつ、太陽光を受けて電力を生み出すことができます
  • 外観の意匠性を高めたソーラーパネルとしてご活用いただけます

看板や標識などのサイン製品のほか、建材、照明器具としてもご使用いただけます。

その他、独自技術でソーラーパネルの外観をカバーする商品をラインナップしています。

資料のダウンロード

お問い合わせ

製品に関するご質問やご要望、お見積りのご依頼は以下のフォームをご利用ください。

今後の動向について

ソーラーパネル(モジュール)

脱炭素社会の実現へ向けて、再生可能エネルギーの活用は必須となっています。太陽光発電は再生可能エネルギーの中で最も高い比率をもちます。普及拡大が進んでいる分野でもあります。今後も太陽光発電の普及を進めるにあたり、人々の生活空間や自然と調和することが重要です。設置場所における外観性の改善や技術的なイノベーションはもちろん、規制といった法整備まで意識を高めていくことが求められます。